原状回復義務が不要となった賃貸借契約の解約について(★★☆☆☆)

質問

当社は本社について賃借し、働きやすい環境を作るために内部造作等を実施していました。
契約した賃貸借契約書には、原状回復義務がありました。
そのため、当社は工事業者に原状回復額の見積を依頼し、見積額で資産除去債務を原則法で計上していました。
従業員人数が増加したため移転を決定し、不動産会社に解約の旨を伝えたところ
「次の賃貸借希望者から、内部造作は原状回復せず、そのまま譲渡して欲しい要望がある」旨聞きました。
この場合、(1)未償却の資産帳簿残高(資産側)と(2)資産除去債務(負債側)の会計処理はどうすべきでしょうか。

結論

(1)未償却の資産帳簿残高(資産側)
資産除去債務の帳簿価額(取崩額)を固定資産売却損益に含めて処理

(2)資産除去債務(負債側)
資産除去債務額を借方計上の上、貸方で「資産除去債務戻入益」で計上

基準

資産除去債務に関する会計基準(企業会計基準第18号)_15項 最終改正2008年3月31日

整理

(1)未償却の資産帳簿残高(資産側)
賃貸借契約を行い、固定資産について原状回復義務がある場合で内部造作等について、次のオーナーに譲渡等を行うことを想定されない場合、原状回復が必要な固定資産取得時に資産除去債務を計上が必要です。
その後、当初想定していなかった売却を行うこととなった場合、原状回復の履行や耐用年数の短縮に伴う早期償却ではなく、売却するための資産であると考えられるため、資産除去債務の未償却の資産帳簿残高を固定資産売却損益に含めて処理することが適切であると考えられます。

(2)資産除去債務(負債側)
基準15項において以下定めがあります。

資産除去債務の履行時に認識される資産除去債務残高と資産除去債務の決済のために実際に支払われた額との差額は、損益計算書上、原則として、当該資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額と同じ区分に含めて計上する。

そのため、資産除去債務残高の戻入額は、損益計算書上販売費および一般管理費に計上されるように思われますが、売却は、資産除去債務を計上時点では想定していないものであるため、15項の定めるところとは異なると考えられます。
そのため、資産除去債務残高の戻入額は、販売費および一般管理費のマイナスではなく、営業外収益または特別利益に計上するべきであると考えられます。なお、営業外収益と特別利益の区分は以下と考えられます。

・臨時、多額のいずれかの要件を満たさなければ、「営業外収益」に計上
・臨時かつ多額であれば、「特別利益」に計上

状況より臨時性はあると考えられますが、多額でない場合は営業外収益への計上が考えられることに留意が必要です。

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