(1)新規取引開始時のポイント_販売プロセス

はじめに

新規の取引を行うにあたり、重要なポイントは2つあります。
①取引先が反社会的勢力や反市場勢力に該当しないか
②会社の財務状況(支払能力)に問題がないか


①につき、法務省は、反社会的勢力を排除するためには、暴力団の資金源に打撃を与えることが不可欠としています。
さらに近年は、企業によるコンプライアンス遵守の姿勢が、そのまま企業価値に直結しています。
コンプライアンスに背くような活動が発覚すると、消費者が企業に抱くイメージやブランド力が低下します。
こうした政府や社会の動きに伴い、上場会社にも反社会的勢力との断絶が求められています。
また、IPOを目指す企業が、上場申請するにあたり、「反社会的勢力との関係が無いことを示す確認書」を提出することが義務づけられています。
「反社会的勢力との関係が無いことを示す確認書」のリストに基づき、東京証券取引所(東証)は独自の調査によって、これらのリストに挙げられた企業や個人が反社会的勢力とのつながりがないかチェックが行われます。
これらのチェックは受付前の事前確認の段階で、主幹事証券会社などによっても実施されます。
そのためIPO準備段階で反社チェックを入念に行っておくことが欠かせないです。

②につき、取引先の資金繰りが悪化したことにより、売上債権の回収できなくなった場合、損失が生じます。
貸倒額が多くなった場合には、当社自体の資金繰り悪化に繋がるため、取引先の財務状況(支払能力)の管理が重要です。

①取引先が反社会的勢力や反市場勢力に該当しないかの検討方法

確認方法は、コストがかからない無料のものから効率的に行える有料なサービスを含めて例えば以下があります。

金額内容
無料Google検索
有料新聞記事情報データ検索

Google検索

Googleの検索機能には「アンド検索」と「オア検索」があります。

アンド検索:何の記号も付けずに2つ以上のワードを並べて検索すること。
そのワードが含まれる検索結果が表示されます。

オア検索:2つ以上の単語の間に「OR」を付けて検索すること。
入力されたワードのうちいずれかが含まれる検索結果が表示されます。

その際、検索するワードには社名や個人名のほかに、コンプライアンス違反を強く疑わせるようなワードを組み合わせて検索します。たとえば、次のようなワードが考えられます。

行政指導/行政処分/送検/捜査/逮捕/インサイダー/架空/脱税/申告漏れ/罰金/暴力団/ヤクザ/容疑/反社/事件/違法/違反/疑い/偽装/告訴/スキャンダル/罪/不正/ブラック/釈放/摘発/指名手配/殺人/傷害/詐欺/窃盗/収賄/横領/着服/etc…

こうしたワードの選定は、業界や企業ごとにリスクの重要度が異なるので、あらかじめ検索するリストを作ります。
また、普通に単語を記入して検索すると「単語の一部が使われた、似たような検索語での検索結果」も表示され、情報が煩雑になります。
そこで会社名や個人名だけ完全一致で検索したい場合には、ワードを「“ ”」で囲むと、そのワードが含まれた情報だけを確実に検索できます。

気になる情報はローカル環境に保存する(証跡を残す)

検索によってコンプライアンス違反が疑われるような情報が見つかった場合、そのページなどをローカル環境に保存しておくことが大切です。
ただし、URLだとページがなくなってしまう可能性もあるため、スクリーンショットの機能などを活用してPDFや画像形式で保存しておくことが望ましいです。

新聞記事情報データ検索

例えば日経テレコンなどのWeb新記事情報データを利用します。
日経テレコンは30年分以上の過去記事を収録しており、500超の媒体を一括検索できます。
取引先の会社名を各社の基準に則ったネガティブキーワードと組み合わせて検索することで、簡単にチェックできます。企業名などをもとに一括でチェックすることもできます。

②会社の財務状況(支払能力)に問題がないかの検討方法

直接調査

取引先企業の代表や担当者に、訪問や電話、FAX、メールなどの手段でヒアリングを行います。
訪問調査の方が直接自分の目や耳で確認できるので、貴重な情報を得やすくなります。インターネットや資料からでは把握しにくい、会社の雰囲気や仕事の様子、スタッフの対応を見たり、社内の設備や在庫状況などをチェックしたりすることも可能です。また、取引先の担当者からのヒアリングも、貴重な情報を聞き出せるチャンスとなります。

外部調査

調査対象となる企業以外から情報を集める外部調査は、大きく3つの方法に分類されます。
(1)官公庁調査
(2)検索調査
(3)側面調査

(1)官公庁調査

「官公庁調査」は、官公庁の公開情報を利用します。法務局では商業登記簿と不動産登記簿を閲覧できます。たとえば、商業登記簿をチェックすれば、商号や本店所在地の変更の頻度から、過去の不祥事を隠蔽している可能性や支払いの滞納の経緯などを調べることが可能です。さらに、資本金の増減から経営業況をチェックしたり、取引先の債権保全に利用されることもある債権譲渡や質権設定、動産譲渡などの登記設定を確認したりもできます。また、不動産登記簿は所有権の取得や移転、抵当権の状況などを見ることができ、経営状況や取引姿勢をうかがうこともできる貴重な情報源です。

(2)検索調査

「検索調査」は、インターネットを利用してウェブサイトの閲覧や企業情報データベースの検索を行います。取引先の公式ホームページなどで公開している決算報告、IR情報などは大事な調査資料となります。また、役員などの頻繁な人事異動がないか、就職情報サイトなどの情報がホームページの内容とずれていないかといった点をチェックするのも方法です。調査対象の企業名や代表者の名前を検索サイトに入力するだけで、インターネット上にはたくさんの情報が出てきます。

(3)側面調査

「側面調査」は、直接調査とセットで行います。直接企業へ訪問して調べた情報が実際に正しい内容であるかを確認するための調査で、「裏付け調査」とも呼ばれます。情報源となるのは、たとえば、調査対象企業が取引しているほかの企業や銀行、住所を置いているビルのオーナーなどです。調べる際には、信ぴょう性の高い情報を提供してくれる情報先を上手に選ぶ必要があります。

依頼調査

自社による調査では十分に与信調査ができないと判断したときに選択する方法が依頼調査です。第三者に調査を依頼する方法で、大きく分けて「照会調査」と「依頼調査」の2種類があります。

照会調査は、取引先や取引先の関係先などに対して取引の情報や経営内容について照会を行う方法です。一方、依頼調査は、企業調査を専門的に行っている調査会社に調査を依頼する方法をいいます。これらの方法では、情報が正確であるかを確認できるほか、直接調査では集められない情報を得ることも可能です。

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