監査法人で本当に必要な知識

はじめに

公認会計士になるためには、三次試験までの合格が必要であり、公認会計士の独占業務である監査を行う監査法人への入社には、一般的に二次試験である公認会計士試験論文式試験まで合格することが必要とされています。
そのため、公認会計士を目指す人は、論文式試験の合格を目指しますが、二次試験を含めた2022年度の合格率は7.7%と狭き門であり、合格するまでに約4,000時間かかるといわれています。試験科目は、
短答式試験の試験科目
・財務会計論
・管理会計論
・監査論
・企業法
論文式試験
・会計学(財務会計論と管理会計論が合わさったもの)
・監査論
・租税法
・企業法
・選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち、受験者があらかじめ選択する1科目)
となっており、科目数が多く、それぞれの科目の範囲も広いため、試験合格には広く浅く勉強することが必要です。
しかし、実務ではあまり知識として使わない科目もあり、個々の論点を解決するためにピンポイントでの知識が必要です。
そのため、本当に実務で使える知識をまとめていきます。

まず実務でよく使う科目とあまり使わない科目は以下です。
よく使う科目
①財務会計論
②監査論
③企業法
④租税法
あまり使わない科目
⑤管理会計論
⑥選択科目
その中で、会計の専門家である以上①財務会計論の知識が一番必要です。試験勉強は広く浅くの知識であり、実務で使えるレベルからは不足するため、知識のアップデートが必要になります。
②監査論は公認会計士の独占業務である監査をする上で必要な知識ですが、監査基準をもとにそれぞれの監査法人ごとに監査のルールが決められているため、大枠を理解した上であとは各監査法人でのルールに沿うことが必要です。
③企業法も監査をする上で必要ですが、日常監査業務をする中で必要な企業法の知識は限定的です。
④租税法は法人税等の監査をする中で必要です。法人税等は会社の顧問税理士へ依頼され申告書等を作成されることもあり税金に関する広く、深い専門知識を必要とするため、監査法人入社後新人期間に担当することはなく、高年次になった時に担当することが多いです。
⑤管理会計論で使うことがあるものとして原価計算があります。IPO支援などにおいて、適切な会計処理ができるように原価計算体制知識が必要になりますが、すでに原価計算体制がある上場企業などではあまり使わない科目です。
⑥選択科目で、公認会計士試験受験生が選択することが多いのが経営学です。経営学で実務で使うものとして売上債権の回転期間分析などがありますが、理論的なものについては監査法人で監査をする中では使うことがないです。

そのため、よく使う科目のうち会計の専門家として
①財務会計論で理解した方がいいこと
②企業法は抑えた方がいいポイント
③監査論は実務での業務を踏まえた監査知識
をまとめていきます。
④租税法は広く、高年次から必要な項目になるため割愛します。

①財務会計論

公認会計士の短答式試験、論文式試験でともに必須科目である財務会計論。
試験合格には1,000時間程度の勉強時間が必要ですが、監査をする上では試験勉強したことをもとに各科目をみてパッと何が論点になるかを上げることができるが重要になってきます。
そのため、各科目で特に論点になることを中心にまとめていきます。

②企業法

公認会計士の短答式試験、論文式試験でともに必須科目である企業法。
内訳は、会社法・商法・金融商品取引法で構成されており、試験では条文の正確な暗記が必要となり、試験合格には700時間程度の勉強時間が必要だと言われています。
公認会計士は監査を行う以上、会社に関する法律は必須知識ですが、監査で日常に必要な知識は限定的です。
あくまでも個人的見解ですが、実務で本当に必要な知識は以下になります。
①監査スケジュール
②監査が必須になる決算期
③増資、減資までの手続及びスケジュール
なかでも、毎期監査をする以上①が②・③と比べて重要度が高いため、本当に最低限は①をまず理解すればOKです。
そのため、①を中心に②・③も論点をまとめていきます。

③監査論

公認会計士の短答式試験、論文式試験でともに必須科目である財務会計論。
試験合格には400時間程度の勉強時間が必要であり、監査法人で監査をする上では必須の知識となります。
実務での悩みなどを踏まえたポイントをまとめていきます。

各科目の詳細なまとめはこれから順次していきます。

最後に上記はあくまでも国内企業やIPOを目指す企業を中心に監査を行ってきた私の意見です。
公認会計士の選択として、監査法人勤務以外に事業会社でのCFOや経理担当者、独立開業など幅広い選択肢の中では有用な知識が公認会計士試験の勉強にはあります。
そのため、あくまでも監査法人での監査に限定した公認会計士試験受験生や新人会計士、監査アシスタントの方などへの本当に必要な知識をさらっと書かれたもの程度に思った頂ければと思います。
監査法人が得意な保守的、リスクヘッジです(笑)

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