上場時に必要な資金調達費用の計上区分について(★★★★★)

質問

当社は上場を目指すスタートアップです。上場に必要な費用として以下①~⑨が考えられますが、上場時に必要な費用について販売費および一般管理費(販管費)と営業外費用(営業外)の一般的な境目はどこになるでしょうか?
①監査報酬
②証券会社への上場指導手数料
③上場審査料
④目論見書の作成・印刷費用
⑤コンフォートレター費用
⑥株式の公募又は売出に係る費用
⑦新規上場料
⑧主幹事証券会社の成功報酬
⑨登録免許税

結論

①監査報酬と②証券会社への上場指導手数料が販売費および一般管理費(販管費)、③上場審査料~⑨登録免許税が営業外費用(営業外)であると考えられます。

基準

繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い(実務対応報告第19号)_最終改正2010年2月19日

整理

基準では株式交付費について以下定めがあります。
3 会計処理
(1) 株式交付費の会計処理
株式交付費(新株の発行又は自己株式の処分に係る費用)は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができる。この場合には、株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。
株式交付費とは、株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のために直接支出した費用をいう。

上場を行うにあたっては、監査法人による監査、証券会社からの上場指導、東証による上場審査など必要な事項が多岐に渡ります。その費用は、企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動にかかる費用に該当すると考えられるため、株式交付費に該当すると考えられます。
ただし、①監査法人による監査報酬・②証券会社の上場指導手数料は、契約している場合、上場の有無に関わらず必要となる費用となるため、資金調達のための費用には該当しないとし、販売費および一般管理費として計上されることが一般です。
③上場審査料は、上場審査段階で審査の認可が下りない可能性などがあり、その場合には資金調達が出来ないため、資金調達のためにかかった費用として株式交付費に該当しないとし、営業外費用ではなく、販売費および一般管理費に計上する会社もありますので、各社の上場確度等に応じて計上区分を決定されます。

<まとめ>

項目内容区分
①監査報酬Iの部や申請書等を監査及びレビューするための費用販管費
②証券会社への上場指導手数料東証審査等を熟知した証券会社からの上場準備指導料販管費
③上場審査料上場申請時の上場審査料営業外
④目論見書の作成・印刷費用有価証券の募集等にあたって、有価証券の内容を説明したもの営業外
⑤コンフォートレター費用届出書の経理の状況以前を監査法人がチェックするのにかかる費用営業外
⑥株式の公募又は売出に係る費用上場した株式の公募または売出し費用営業外
⑦新規上場料上場の際の新規上場料営業外
⑧主幹事証券会社の成功報酬上場達成時に主幹事証券会社へ支払う成功報酬営業外
⑨登録免許税上場調達金額に応じた登録免許税額営業外
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