スタートアップにおける減損判定のポイント(★★★★☆)

質問

当社はスタートアップです。積極的な投資を行っているため、創業時から継続して赤字です。ただ、赤字は創業当初から予定しているものであり、長期的には黒字になることを見込んでいます。減損に関する会計基準で、減損の兆候に「2期連続営業赤字」があることを認識しており、当社は該当するのですが、減損の兆候判定ありになりますでしょうか。
①減損の兆候あり
②減損の兆候なし
③減損の兆候ありかなしか判断できない

結論

③減損の兆候ありかなしか判断できない

基準

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針_12項(4) 最終改正平成21年3月27日
減損の兆候に関する例示として、12項〜17項に定めがある。
そのうち、12項において営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合について定めがある。
そのうち、特にスタートアップ等においてポイントとなるのは以下の通り。

事業の立上げ時など予め合理的な事業計画が策定されており、当該計画にて当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しない(第 81 項参照)。

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針_81項 最終改正平成21年3月27日
事業の立上げ時など当初より継続してマイナスとなることが予定されている場合には、 投資後の収益性の低下により減損が生じている可能性を示す事象ではないため、減損の兆 候には該当しないのではないかという考え方と、そのような場合であっても、実務上、過 大な負担となるおそれは少ないと考えられるため区別せず、減損の兆候に該当するとして も差し支えないという考え方がある。本適用指針では、減損の兆候の意義に照らし、予め合理的な事業計画(当該計画の中で投資額以上のキャッシュ・フローを生み出すことが実行可能なもの)が策定されており、実際のマイナスの額が当該計画にて予定されていたマイナスの額よりも著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しないものとしている(第 12 項(4)参照)。

整理

スタートアップ・新規事業の場合、最初の数年においては営業損失が発生することがあります。そのため、「2期連続営業赤字」になるため、減損の兆候に該当するように思われます。しかし、スタートアップ等の場合には、実績が事業計画と比較して著しく下方に乖離していないときには、減損の兆候には該当しないと判断できることがあります。ただし、事業計画の中で、投資額以上のキャッシュ・フローを生み出すことが実現可能なものである必要があります。

そのため、スタートアップ等における減損兆候判定の検討フローは以下となります。
<流れ>
①主要な資産をもとにした回収可能期間全体において、投資額(減損対象固定資産額)以上のキャッシュを生み出すことが計画されているかを確認
↓投資額以上のキャッシュを生み出すことが計画されている場合
②実績と創業等当時の事業計画との乖離状況を確認
乖離状況が著しい:減損の兆候あり
乖離状況が著しくない:減損の兆候なし

スタートアップなどにおいて、②の実績と事業計画を比較した乖離状況で減損兆候なしと判断できることを認識されていることが増えて印象です。一方で、②の前提として、①の回収可能期間全体において、投資額(減損対象固定資産額)以上のキャッシュを生み出すことが計画されているかが必要ですので、①の判断ももれなく実施することが重要になります。

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