資産除去債務の原則法におけるマイナス金利について(★☆☆☆☆)

質問

当社は当期において本社移転を行いました。本社は賃借しており、契約において原状回復義務があるため、工事業者に見積依頼を行った結果、敷金額を超える原状回復見積額となったため、資産除去債務の原則法が必要な会社です。
資産除去債務の原則法を適用するにあたり割引率を国債の利回りとした結果、マイナス金利となりました。この場合に、割引率はいずれとなるでしょうか。

①割引率はマイナス金利のままとすることが必須
②割引率ゼロ金利とすることが必須
③割引率をマイナス金利orゼロ金利いずれとするかは任意

結論

①割引率はマイナス金利のままとすることが必須 

基準

債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い11項~13項 
最終改正:2017年3月29日
 

整理

実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い 」において、退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用するか、マイナスの利回りをそのまま利用するかについては一義的には決まらないとあります。
マイナスはゼロとして割引率等を算定すべきとする意見として示した考え方として以下(1)~(3)があります。

(1)現金を保有することによって現在の価値を維持することができることから、金銭的時間価値は時の経過に応じて減少することはない
(2)退職給付に係る負債は、退職給付債務から年金資産の額を控除した額とするが、これは表示上相殺しているに過ぎないため、年金資産の評価にマイナス金利の影響が反映されるとしても、年金資産の評価と退職給付債務の評価を整合させる必要はない
(3)現時点における負債の金額は将来の見積り支払総額を越えることはない

(3)の現時点における負債の金額は将来の見積り支払総額を超えることはないという点は資産除去債務に関してもあてはまると考えられますが、貨幣の時間価値を反映した利率自体がマイナスであるときに、(3)にあてはまることのみをもって割引率をゼロ止めすることは難しいと考えられます。
また、(1)、(2)の考え方は、資産除去債務においては該当しないと考えられます。
そのため、資産除去債務の現在価値の計算において、マイナス金利はそのまま用いることが適当であると考えられます。

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