質問
当社には様々な前払取引があります。前払取引として、一時の外注取引、出張で利用する宿泊施設の予約金、本社の不動産の購入に必要となる手付金、商品仕入のための手付金、1年分の保守取引があります。前払取引の勘定科目として前渡金、前払金、前払費用がありますが、それぞれどの勘定科目を利用するのが適切でしょうか。
<勘定科目>
①前渡金
②前払金
③前払費用
④建設仮勘定
<取引>
a.外注費の着手金(将来販管費計上予定)
b.出張で利用する宿泊施設の予約金
c.本社の不動産の購入に必要となる手付金
d.商品仕入のための手付金
e.1年分の保守取引
結論
①前渡金
d.商品仕入のための手付金
②前払金
a.外注費の着手金(将来販管費計上予定)、b.出張で利用する宿泊施設の予約金
③前払費用
e.1年分の保守取引
④建設仮勘定
c.本社の不動産の購入に必要となる手付金
基準
前渡金=財務諸表等規則15条11号
前渡金は商品、原材料等の購入のための前渡金をいう。ただし、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で一年内に回収されないことが明らかなものを除く。
前払金=明記なし
前払費用=企業会計原則注解【注5】 経過勘定項目について(損益計算書原則一のAの2項)
⑴ 前払費用
前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。
整理
前渡金と前払金について基準上明確な区分要件はないです。そのため、両者を混同して利用することも考えられますが、財務諸表等規則は前渡金について商品、原材料等の購入のための前渡金とされているため、将来的に売上原価となるものを前渡金(買掛金の対になるものとの考え)、前渡金に該当しない物品購入(消耗品購入など販管費などに計上されるもの)や一時的な役務提供サービスを前払金計上して区分し、それぞれの数値を把握することができるようにしていることも多いですので、実務上の区分工数、それぞれの実態把握の有用性から基準をそれぞれの会社で決定することが必要になります。
前払費用は、継続的な役務提供サービスの事前支払金額のうち、未消化分であり、一時的ではなく、継続的な役務提供サービスである点が明確な違いとなります。
また、前払のうち将来的に固定資産に計上されるものに関する前払は建設仮勘定として計上することが適切であると考えられます。
よって、今回の質問の場合は、e.1年分の保守取引のみ継続的な役務提供サービスであると考えられるため、前払費用に該当すると考えられます。その他は、一時取引であると考えられ、そのうち、d.商品仕入のための手付金は将来的に売上原価となるもののため、前渡金と考えられ、a.外注費の着手金(将来販管費計上予定)、b.出張で利用する宿泊施設の予約金は売上原価に計上されるものではないと考えられるため、前払金計上することが考えられます。c.本社の不動産の購入に必要となる手付金は将来的に固定資産に計上することが考えられるため、建設仮勘定に計上することが適切であると考えられます。
<まとめ>
前渡金(前払金)=商品などの物品購入、または一時的な役務提供サービスのための事前支払金額のうち、未使用分。前渡金と前払金について基準上明確な区分要件はないが、実務上は
・前渡金=商品など将来的に仕入(売上原価)計上されるもの
・前払金=前渡金に該当しない物品購入(消耗品購入など販管費などに計上されるもの)や一時的な役務提供サービス
と勘定科目を区分してそれぞれの残高が分かるようにしていることもある。
前払費用=継続的な役務提供サービスの事前支払金額のうち、未消化分。
建設仮勘定=前払のうち将来的に固定資産に計上されるものに関する前払
今回は資産側でしたが、関連する論点が負債側にあります。下記記事にまとめてますので、宜しければご覧ください。