ソフトウェアの資産計上

現在においては、すべての企業で利用されているIT。ITの利用は様々で、SaaSサービス(Freee会計システムやAmazonのAWSなど)を利用したり、自社業務を効率化するためのシステム開発を行ったり、HPを制作したりします。ソフトウェアに関する会計上の取扱いに関し、ショート・レビュー、監査において論点となることが多いです。
論点となるもののうち、頻出するもの3選まとめました。

① HP制作費の取扱い
② 自社業務を効率化するためのシステム開発の取扱い
③ SaaSサービスの利用料について

①HP制作費の取扱い

結論は以下と整理されることが多いです。

会計=一括費用計上
財務=ソフトウェアとして資産計上

HPは会社案内や人材募集など会社によって目的は様々ですが、会計上は、「自社利用のソフトウェア」に該当すると考えられます。

自社利用のソフトウェアに関し、資産計上するためには、収益獲得が確実または費用削減が確実であることが必要となり、またそもそもとして一定の仕事を含むプログラムが必要であると考えられます。

この点において、HPは収益獲得または費用削減が確実とはいえず、一定の仕事を含むプログラムではなく、電子データである情報の内容と考えられるため、ソフトウェアとして無形固定資産に計上することは認められず、取得時に一括費用計上することが必要になります。

なお、税務上は会計上と異なり、原則が資産計上であり、例外が損金(≒費用)として真逆の処理が必要となります。

税務上の損金が認められる例外な判断要件は以下になります。

①簡易なHPである(複雑なホームページとされるものは、オンラインショッピングができたりするような高度なプログラムが組み込まれているもの)

②作成費用の効果が1年以上に及ばない、もしくは効果が1年を超えるが支出金額が20万円未満におさえている
効果が1年以上に及ぶかどうかの判断基準はこちらの二つになります。
(1)頻繁にホームページを更新しており、作成時の費用の効果は1年以上に及ばないとみなされる
(2)更新せず長期にわたり使い続けられるものは、繰り返し使用できるものと判断され繰延資産とみなされる

なお、例外として、中小企業者等の青色申告を提出される企業は、高度なプログラムを有するホームページでも、30万円未満までの支出金額の場合は、一定の条件をクリアすれば少額減価償却資産として損金処理できます。

②自社業務を効率化するためのシステム開発の取扱い

結論は以下となることが多いです。

システム作成前段階での文書化が実施されている=ソフトウェアとして資産計上
システム作成前段階での文書化が実施されていない=研究開発費として一括費用計上

自社業務を効率化するためのシステム開発は、会計上「自社利用のソフトウェア」に該当すると考えられます。
自社利用のソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合のみ無形固定資産に計上することが可能となります。

この確実と認められるには、確実と立証できる証憑が必要であり、実務上工数を要するところであり、上場準備企業においては証憑を整理するところが難しく、資産計上できず、費用計上となることも多いです。

③SaaSサービスの利用料について

結論は、毎月の利用料は費用計上するとともに、一括前払がある場合には、前払費用(1年超のものがある場合には、長期前払費用)として資産計上します。

SaaSサービスの利用料も「自社利用のソフトウェア」と利用目的などは類似しますが、会社が保有するものではなく、あくまでサービスを利用しているのみであり、自社のソフトウェアではないと考えられます。

そのため会計上は、ソフトウェアとして資産計上することはできず、役務提供を受けるための前払と考え、前払費用として計上することが必要です。

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