SaaSビジネスにおけるソフトウェアの取り扱い(★☆☆☆☆)

質問

当社はSaaSビジネスを行っています。ソフトウエアの会計基準を見るに、ソフトウェアを利用して収益を獲得する場合、市場販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアがあります。SaaSビジネスを行う企業の場合、どちらを採用することが多いでしょうか。
①市場販売目的のソフトウェア
②自社利用のソフトウェア

結論

②自社利用のソフトウェア

基準

ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料~DX 環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~2022年6月30日_P21


研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第12号) 

11.自社利用のソフトウェアの資産計上の検討に際しては、そのソフトウェアの利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であることが認められるという要件が満たされているか否かを判断する必要がある。その結果、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には、費用処理する。
12.自社利用のソフトウェアに係る資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、そのことを立証できる証憑に基づいて決定する。そのような証憑としては、例えば、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書、ソフトウェアの制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられる。

整理

日本公認会計士協会の「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料~DX 環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」において、サービス提供のために利用するソフトウェアの分類の調査結果として、自社利用のソフトウェアとしている会社が16社に対し、市場販売目的のソフトウェアとしている会社が1社となっています。そのため、多くの企業では、自社利用のソフトウェアとして資産計上していると考えられます。これは、研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書3(3)②では、ソフトウェアを市場で販売する場合には、製品マスター(複写可能な完成品)を制作し、これを複写したものを販売することとなるとされている。SaaS では、ソフトウェアの機能そのものを顧客に提供し、その対価として収益を獲得する点でソフトウェアを市場で販売する取引に類似する側面はあるものの、複写したソフトウェアを販売するものではなく、ソフトウェアが移転するものではない点を踏まえると、市場販売目的のソフトウェアに直接は該当しないと考えられる。

なお、自社利用のソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合のみ無形固定資産に計上することが可能となります。確実であると立証できる証憑が必要であり、実務上工数を要するところであり、上場準備企業においては証憑を整理するところが難しく、資産計上できず、費用計上となることも多いです。

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