貸倒引当金の戻入益について(★★★☆☆)

質問

前期に得意先1社の財政状態が懸念されたため、貸倒懸念債権に該当すると判断し、貸倒引当金を計上していました。
当期において、貸倒懸念債権を計上していた得意先から売上債権金額の全額を回収できたため、当期に貸倒引当金の戻入処理をした結果、貸倒引当金繰入額を上回りました。この場合、開示上の表示科目は何が適切でしょうか?

①販売費および一般管理費に貸倒引当金繰入額のマイナス額表示
②営業外収益に貸倒引当金戻入益として表示
③どちらでもよい

結論

③どちらでもよい

基準

金融商品会計に関する実務指針 最終改正:2022年10月28日
125.当事業年度末における貸倒引当金のうち直接償却により債権額と相殺した後の不要となった残額があるときは、これを取り崩さなければならない。ただし、当該取崩額はこれを当期繰入額と相殺し、繰入額の方が多い場合にはその差額を繰入額算定の基礎となった対象債権の割合等合理的な按分基準によって営業費用(対象債権が営業上の取引に基づく債権である場合)又は営業外費用(対象債権が営業外の取引に基づく債権である場合)に計上するものとする。また、取崩額の方が大きい場合には、過年度遡及会計基準第55項に従って、原則として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益として当該期間に認識する。

整理

金融商品会計に関する実務指針において、
・売掛金などの営業上の取引に基づく債権に対する貸倒引当金は、営業費用として計上
・貸付金などの営業上の取引以外に基づく債権に対する貸倒引当金は、営業外費用として計上
することとされています。

今回の例では、売上債権に対する貸倒引当金として営業費用を前期計上していました。
実務指針において、取崩は営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益として計上するかいずれかとされており、控除する場合には、前期において営業費用で計上しているため、販売費および一般管理費に計上している貸倒引当金繰入額から控除することが考えられます。その場合にマイナスとなることも実務指針において否定されていないことから、販売費および一般管理費という費用項目ですが、費用のマイナスということで収益側ポジションで計上することが考えられます。

よかったらシェアしてね!
目次