質問
当社はシステム開発会社です。新たに新規顧客と取引を行う予定であり、取引は将来的な大型受注を見込んで赤字受注です。当社はシステム開発の収益認識基準として、工事進行基準(一定の期間にわたり充足される履行義務)を採用しています。収益認識に関する会計基準の38項(3)②において「企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること」が一定の期間にわたり充足される履行義務の収益認識要件の一つになっています。
赤字受注の場合にも「企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること」は適用することはできますでしょうか。
①赤字受注の場合にも適用することはできる
②赤字受注の場合にも適用することはできない
結論
①赤字受注の場合にも適用することはできる
基準
収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)改正:2020年3月31日
11.会計基準第38項⑶②に定める履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有しているかどうかの判定は、契約条件及び当該契約に関連する法律を考慮して行う。
履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合とは、契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で顧客又は他の当事者が契約を解約する際に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を企業が有している場合である([設例7]及び[設例8])。
12.履行を完了した部分についての補償額は、合理的な利益相当額を含む、現在までに移転した財又はサービスの販売価格相当額である。合理的な利益相当額に対する補償額は、次の⑴又は⑵のいずれかである([設例7])。
⑴ 契約に基づき履行を完了した部分について合理的に見積った利益相当額の一定割合
⑵ 対象となる契約における利益相当額が、同様の契約から通常予想される利益相当額より多額の場合には、当該同様の契約から予想される合理的な利益相当額
整理
収益認識に関する適用指針11項において、「契約において、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合とは、契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で顧客又は他の当事者が契約を解約する際に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を企業が有している場合である」とされています。この点、赤字受注の場合にも、履行を完了した部分について補償を受ける権利を有している場合には、対価を収受する強制力のある権利に該当すると考えられます。