監査法人で本当に必要な企業法の知識③

はじめに

近年HISやスカイマーク、毎日新聞など大企業などでも資本金を1億円以下にする会社が増加しています。
資本金を1億円以下にすることで、税制上優遇されるため、採用する会社が多い認識です。
また大企業以外だけでなくスタートアップでも、増資による1億円超を獲得した時に、決算期末までに減資を行うことが一般的です。減資を行う理由は、大企業同様に税制上の優遇を受けるためと上場会社と異なり、会計監査が必須ではない非上場会社のスタートアップで、増資により資本金が5億円以上となる会社では、会計監査人設置が必須となるため、会計監査人の設置を免れるためにも減資を行うことが多いです。
減資の手続は多岐に渡りますが、監査法人では業務への直接的な関与がないため、手続について理解できていないことが多いです。しかし、最近の減資件数の増加と会計監査が必須となるかにも関わるため、理解することは必要となります。

なお、資本金が会計年度末で5億円以上で会計監査が必要となるのは、当事業年度からではなく、翌事業年度からとなります。仮に翌事業年度の会計年度末で資本金を1億円以下に減資を行ったとしても、減資を行った翌事業年度においては会計監査人が必須であり、翌々事業年度から会計監査人必須ではなくなることから会計監査人を設置しない場合会計監査は任意となりますので、会社からアドバイスを求められた場合には、その旨伝達することが必要です。

減資に必要な手続

減資に必要な手続の大まかな流れは以下です。
なお、債権者保護手続として、官報+電子公告のケースです。

日程手続
9月1日取締役会決議
(減少する資本金の内容決定、株主総会の招集決定)
官報公告の申込み、電子調査会社へ調査の申込み
9月2日株主総会の招集通知の発送
9月17日WEBサイトに資本金の額の減少公告を掲載
9月18日官報に資本金の額の減少公告が掲載
9月20日株主総会の決議
10月19日債権者保護手続きの期間満了
10月25日資本金の額の減少の効力発生
10月25日以降登記申請(2週間以内)

(1)減資決議

減資の決議は原則株主総会の特別決議になります。
ただし、定時株主総会において欠損の填補に充てる場合は、株主総会の普通決議によることが可能です。株主総会の特別決議で決議する内容について、取締役会で決議が行われます。

(2)債権者保護手続

減資を実施する場合には債権者保護手続が必要です。
債権者保護手続として、
・官報+個別催告
・官報+電子公告
・官報+日刊新聞紙
が考えられます。
官報への掲載は、約15万円ほど必要であり、官報HPなどから申請します。
個別催告の場合は、原則すべての債権者に対して行う必要があります。
電子公告は、約11万円ほど必要であり、NDK株式会社のHPなどより申請します。
日刊新聞紙の場合も約11万円ほど必要であり、各新聞社のHPなどより申込します。

(3)登記申請手続

登記申請手続に必要な主な書類は以下になります。

資料名必須or場合によって
株主総会議事録(または取締役会議事録)必須
株主リスト(株主総会議事録の場合)場合によって
一定の欠損の額が存在することを証する書面(株主総会の普通決議の場合)場合によって
公告をしたことを証する書面必須
債権者へ個別の催告をしたことを証する書面(債権者に個別催告を実施した場合)場合によって

登録するためには、登録免許税が3万円ほどかかり、法務局に申請を行います。

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