はじめに
監査では、「金銭消費貸借契約書」の確認や「残高確認状」との突合などにより残高確認を行うことができ、比較的簡単な監査手続であるため、借入金科目は新人が担当することが多いです。
一方で「金銭消費貸借契約書」締結まで企業は苦労していますが、監査法人の中では手続の流れ含め理解出来ていないことが多いです。そのため、大まかな手続の流れ中心にまとめます。
監査で残高確認を行うことであれば誰でも出来、かつ残高確認は監査法人内でしか生きない知見ですが、借入の実務は法人内でも知っている人も少なく、また事業会社への転職や独立など監査法人外でもとても生きる知識であり、有用です。
借入時に必要な書類
– | 書類名 | 備考 |
---|---|---|
あるものを用意 | ①履歴事項全部証明書 | 最寄りの法務局で ・窓口申請 ・郵送申請 ・オンライン申請 のいずれかにより入手することができます。 |
②決算書 | 直近決算の決算状況を示す資料です。 | |
③試算表 | 決算書から直近の決算状況を示す資料です。 | |
④銀行取引一覧表 | 各銀行に対して、どのくらいの額をどのような形で借入しているかがわかる資料です。 ・銀行名 ・借入金(短期・長期) ・預金残高(普通・当座など) ・預金率 などを一覧表でまとめます。 | |
⑤納税証明書 | 税金を納めているか否かを証明する書類で、税務署で取得できます。 ・窓口に直接出向く ・郵送で請求する ・インターネットで取得する のいずれかで取得することができます。 インターネットでの取得方法は国税庁のHPから確認できます。 | |
⑥事業計画書 | ビジョンや事業内容、戦略などを記載する書類で、今後どのような経営戦略で成長していくのかを明らかにします。銀行は、事業計画書を通して事業の成長性や融資の返済能力を見ています。 | |
⑦資金使途資料 | 融資を受けた資金の使用用途について書かれた資料です。 資金使途は(1)設備資金、(2)運転資金に区分されます。 | |
⑧資金繰り表 | 一定定期間における会社の資金繰り計画を示した書類が資金繰り表です。 | |
⑨印鑑証明 | 登録された印鑑が本物であることを証明する書類です。 銀行融資のような重要な手続きを行う際に提出が必要になります。 | |
新規作成 | ⑩借入申込書 | 銀行から借入する際に提出が必要な書類で、各銀行から取得できます。 |
借入までの流れ
(1)申込
申込は、各金融機関の窓口やHPを確認の上、電話確認、知人などからの担当者の紹介などから申込を行います。
申込にあたり、必要な書類を担当者に確認の上、必要書類を提出します。
必要書類を提出してから、面談までに1週間程度時間を要します。
(2)面談
融資にあたっては、
・申請者(社長)などの「人柄」
・事業の内容
・資金使途
・返済計画
などが確認されます。必要書類準備時に資金使途、返済計画などをしっかりと検討した上で面談望むことが必要です。面談は金融機関側が1~2名、事業会社側が1名程度で30分~1時間程度行われることが多いです。
(3)審査
提出書類や面談などを参考、融資の可否、融資額や金利、返済期間などの条件を金融機関で審査されます。
審査は、最短で1週間程度、長い場合で1か月程度必要になります。
(4)融資実行
審査に通過すると、審査通過の通知と契約手続きの案内の連絡が来ます。
契約後に銀行口座へ入金されます。入金額は一般的に振込手数料などを差し引かれた金額で入金されることが多いです。そのため、入金額で借入金計上するのではなく、契約書にある借入金額をもとに借入金計上します。
なお、書面の契約書の場合、収入印紙(租税公課)が必要なります。
申込から融資が実行されるまで1か月程度は時間がかかることを認識する必要があります。