はじめに
償却資産税は、1月1日に所有している事業用の償却資産の評価額に1.4%を掛けた額が課税されます。
そのため、1月2日以降に取得した固定資産が償却資産税の課税となるのは、翌年になります。
償却資産税の対象となるのは、土地や建物以外の減価償却資産になります。ただし、無形固定資産や少額減価償却資産(10万円未満)、一括償却資産(20万円未満)、繰延資産などは対象外になります。
土地や建物が対象外となるのは、土地や建物は登記されているため、登記内容をもとに固定資産税が課税されるため、②従価税とならないように償却資産税は免除されます。一方で減価償却資産は登記されないため、各法人の1月31日までの申告内容に基づき、課税されます。
項目 | 内容 |
---|---|
頻度 | 年1回 |
締切 | 毎年1月末 |
作成する書類 | 固定資産台帳、償却資産申告書 |
確認する書類 | 請求書、納品書など |
申告先 | 償却資産の所在する各市町村役場 |
作業の時期 | 毎年1月1日から1月31日まで |
納付時期(東京都の場合) | (6月頃に納付書が送付され、)6月、9月、12月、2月の計4回納付 |
前年以前に申告したデータは各市町村で把握しているため、償却資産申告書では前年より増加した資産または減少した資産のみを申告します。
課税標準額(対象資産の評価額の合計額)が150万円未満であれば償却資産税は課税されません(150万円未満でも申告は必要。150万円未満か否かの判断は各市町村が行います)。納付は申告後に送られてくる納税通知書で行います。
「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」の意外な落とし穴
法人税と償却資産税の関係は以下になります。
少額減価償却資産 | 一括償却資産 | 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 | |
---|---|---|---|
対象資産 | 取得価額10万円未満 | 取得価額20万円未満 | 取得価額30万円未満 |
対象企業 | すべて | すべて | 中小企業 |
損金算入限度額(法人税) | 取得した事業年度 | 取得した年度から3年間 | 取得した事業年度 |
損金算入可能額(法人税) | 取得価額の全額 | 取得価額×12/36 | 取得価額の全額 |
償却資産税 | 非課税 | 非課税 | 課税 |
公認会計士の租税法や税理士の法人税法を勉強する中では、資本金1億円以下の中小企業等のみが適用することができる「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」が一括償却資産と比較し有利な特例だと認識されています。
法人税においては、取得価額の全額を取得年度において全額損金算入することができるため、一括償却資産と比較し有利であると考えられますが、例えば、スタートアップのように起業してから数年は赤字(欠損)が生じることが見込まれる場合のように、利益があまり出ていないため経費を多くする必要がなければ、中小少額減価償却資産よりも一括償却資産の方が、消却資産税がかからず有利になります。
そのため、スタートアップが購入する固定資産として多いパソコンなどにおいて、償却資産税の適用対象となるように取得するパソコンの上限金額を20万円未満とする会社も多いです。
事業計画をもとに法人税、償却資産税含めて節税となるように、また、ビジネスの円滑な運営のために各企業がバランスを取ったうえで決定しているため、各企業の考えを知ることができ、監査において単なる数値の整合性確認だけではなく、ビジネスに関し深く理解することができとても参考になります。