質問
当社は、当期新しく非上場会社に投資を行い、投資先企業が当社の関連会社になりました。出資先はスタートアップ企業であり、現在は積極的な投資段階であるため、創業期から継続して赤字になっています。当期末の決算において、当非上場株式の減損検討を行うことになりました。減損の兆候から検討を行い、直近決算に基づく1株当たり純資産が取得価額の50%を下回るため、兆候はあると判断し、回復可能性の検討を行いました。回復可能性の検討の結果、5年内の回復可能見積額は取得価額の70%となったため、減損を行うこととなりました。この場合、減損後の非上場株式の評価額はいくらになりますでしょうか。
①回復可能見積額
②直近決算に基づく1株当たり純資産額
結論
②直近決算に基づく1株当たり純資産額
基準
金融商品会計に関する実務指針_92項 最終改正 2016年3月25日
時価を把握することが極めて困難と認められる株式は取得原価をもって貸借対照表価額とするとされている(金融商品会計基準第19項(2))が、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期 の損失として処理(減損処理)しなければならない(金融商品会計基準第21項)。
財政状態とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を 基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額をいい、財政状態の悪化とは、この1株当たりの純資産額が、当該株式を取得したときのそれと比較して相当程度下回っている場合をいう。なお、この際に基礎とする財務諸表は、決算日までに入手し得る直近のものを使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味する。通常は、この1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額が当該株式の実質価額であるが、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もある。
また、時価を把握することが極めて困難と認められる株式の実質価額が「著しく低下 したとき」とは、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した 場合をいう。ただし、時価を把握することが極めて困難と認められる株式の実質価額に ついて、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の 減額をしないことも認められる。
金融商品会計に関する実務指針_285項 最終改正 2016年3月25日
時価を把握することが極めて困難と認められる株式の実質価額の算定の基礎となる発行会社の財政状態を算定するに当たっては、発行会社の財務諸表を無条件に使用するの ではなく、原則として、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定するもの とした。これは、時価評価に基づくより実態に近い財政状態を算定した上で、その悪化 についての判定を行うという趣旨である。したがって、発行会社の財務諸表において資 産等の時価評価が行われていない場合には、時価評価のための資料が合理的に入手可能 である限り、それに基づいて財務諸表を修正する必要がある。
なお、時価を把握することが極めて困難と認められる株式であっても、子会社や関連会社等(特定のプロジェクトのために設立された会社を含む。)の株式については、実質価額が著しく低下したとしても、事業計画等を入手して回復可能性を判定できることもあるため、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当 の減額をしないことも認められるとした。ただし、事業計画等は実行可能で合理的なも のでなければならず、回復可能性の判定は、特定のプロジェクトのために設立された会 社で、当初の事業計画等において、開業当初の累積損失が5年を超えた期間経過後に解 消されることが合理的に見込まれる場合を除き、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として行うものとする。また、回復可能性は毎期見直すことが必要であり、その後の実績が事業計画等を下回った場合など、事業計画等に基づく業績回復が予定どおり進まないことが判明したときは、その期末において減損処理の要否を検討しな ければならない。
金融商品会計に関するQ&A_Q33 2015年4月14日
回復可能性の判定を行うことができるのは、子会社・関連会社及び特定のプロジェクトのために設立された会社とされる。
整理
回復可能性の判定においては、取得価額と回復見積額との比較を行いましたが、減損額計上においては、回復見積額には、経営者等の恣意性があることから、恣意性のない直近1株当たり純資産額まで減損することが求められます。
取得価額まで回復していない時には、1株当たり純資産額まで減損する必要があるが、回復見積額まで減損するとしている誤りがあるので、留意が必要です。
なお、減損後金額が直近決算に基づく1株当たり純資産というのは、回復可能性判定と異なり、非上場株式の子会社、関連会社株式等とその他有価証券で同様となります。
今回の減損金額の算定の前に兆候判定、回復可能性判定があります。
兆候判定、回復可能性判定について以下記事でまとめていますので、よろしければご覧ください。