有価証券

はじめに

有価証券の会計処理において、金額の変動が生じる主な場合は、
①有価証券の取得
②有価証券の売却
③有価証券の評価
になります。
それぞれの監査における検討方法、検討ポイントは以下になります。

①有価証券の取得

会社においては、一般的に有価証券の残高を記録するために有価証券台帳を作成します。
この有価証券台帳には、取得単価、取得株式数、期末時評価単価など記録します。この有価証券台帳への記録内容が仕訳帳へ記録、試算表へ反映されることになります。そのため、②有価証券の売却、③有価証券の評価もあわせて有価証券台帳と試算表との整合性を確認することを前提に有価証券台帳の検討することになります。

【検討資料】
有価証券の取得の検討のための検討資料は、上場株式と非上場株式で異なります。
上場株式の場合は、
・証券会社から送られてくる取引報告書
・口座を開設する証券会社が交付する取引残高報告書
・月次報告書
・受渡計算書
などが考えられます。このうち、いずれかで証憑としては良いため、証券会社から送られてくる取引報告書を依頼すれば会社担当者も一番すんなりと理解頂け、資料をご準備頂けるかと思います。この資料により取得時期、取得価額を確認することができると考えられます。
非上場株式の場合は、
・株式譲渡契約書
が考えられます。また、株式譲渡契約書に基づき、適切に譲渡が行われたことを確認するための証憑として、株式譲渡された会社が譲受会社に発行する株主名簿記載事項証明書の確認も考えられます。監査の実務としては、株式譲渡契約書のみ、または株式譲渡契約書と株主名簿記載事項証明書のセットで確認することが一般的です。

【検討ポイント】
株式の取得において論点になるのは、①付随費用、②取得日であると考えられます。
①付随費用は、
・税務と会計において処理方法が異なり、さらに
・会計において個別財務諸表と連結財務諸表でも処理が異なります。

付随費用には主に以下のものがあります。
<上場会社の株式取得>
1.証券会社に支払う購入手数料

<非上場会社の株式取得>
2.法務・税務・財務調査費用(DD費用)
3.M&Aアドバイザリー報酬
4.証券会社に支払う購入手数料
5.紹介料や謝礼金
6.交通費や通信費などの費用
7.名義書換料

税務での付随費用の取り扱いは以下とされています。
原則:付随費用は全額有価証券の取得原価に含めるべき(法令119条1項1号)
例外:通信費と名義書換料は少額であるという理由により一括費用計上することができる(法基通2-3-5)

会計での付随費用の取り扱いは以下とされています。
個別財務諸表>金融商品会計に関する実務指針56項
原則:全額有価証券の取得原価に含めるべき
例外:経常的に発生する費用で、個々の金融資産との対応関係が明確でない付随費用は、取得価額に含めないことができる

連結財務諸表>
原則:個別財務諸表と同様
例外:取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬は発生した事業年度の費用として処理

税務と個別財務諸表が異なりますが、原則は両方とも取得原価に含めるべきであるということは共通しています。
税務は各会社のポリシーによって処理方法を変更することは出来ませんが、会計は重要性の概念のもと各会社のポリシーを経理規程等により定め、継続的に実施することにより変更することができます。
そのため、税務上の例外処理である通信費と名義書換料の取り扱いについて会計上も許容することができると判断できる場合には、税務と同様の処理とすることで特段調整は不要であると考えられます。
一方で、企業結合となる株式取得の場合には、個別と連結で会計処理が異なるため、株式取得が何に該当するかの入り口の確認が重要になります。

②取得日は、
自己株式以外:約定日基準(金融商品会計に関する実務指針 22項)
自己株式:対価を支払うべき日(自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針5項)
で計上します。

②有価証券の売却

【検討資料】
有価証券の取得の検討のための検討資料は、上場株式と非上場株式で異なります。
上場株式の場合は、
・取引残高報告書
が考えられます。顧客の取引と預り残高の明細のことであり、取引があった場合は、原則、3か月に1度の頻度で顧客に送付されます。 取引がない場合でも預り残高があれば、1年に1回以上送付されるため、会社において資料を保有していると考えられるため、取引残高報告書を依頼すれば会社担当者も一番すんなりと理解頂け、資料をご準備頂けるかと思います。この資料により売却時期、売却価額を確認することができると考えられます。

【検討ポイント】

③有価証券の評価

【検討資料】
有価証券の評価の検討のための検討資料は、上場株式と非上場株式で異なります。
上場株式の場合は、
・Yahooファイナンスの時系列の決算日終値
を監査人自らインターネット検索した上で会社の決算日単価が適切かを確認します。このサイトはよく使うため、お気に入り登録してすぐに利用できるようにしています。

非上場株式の場合は、
①取得時の1株当たり単価と直近財務諸表の純資産に基づく1株当たり単価を比較
(①で取得時の1株当たり単価が直近財務諸表に基づく1株当たり単価と比較して50%程度以上低下している場合)
②子会社・関連会社の場合は、5年以内の取得時の1株当たり単価までの回復可能性の確認
③その他有価証券の場合は、直近財務諸表の純資産に基づく1株当たり単価まで減損

されているかを確認します。
なお、①の株式評価損の兆候判定は、会社によって異なる可能性があるため、会社の経理規程等を確認し、会社の非上場株式の評価基準をまず確認することが検討初めに重要にになります。

【検討ポイント】

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