監査法人で本当に必要な企業法の知識①

監査法人で監査をする主な企業は上場企業、上場企業以外の会計監査人設置会社になります。
上場会社では、四半期に一度、上場企業以外の会計監査人設置会社では1年に1回会社の業績等を示す開示書類を作成する必要があります。作成された開示書類が適切であるかを監査するのが監査法人の業務になります。この業務に関し、必要な企業法上の手続及びスケジュールについて理解しておくことは実務において重要となります。
ゴールとなる株主総会に向けて、形式的に必要な企業法は省略し、実務で認識すべきことのみをまとめました。

3月決算の上場企業を例にスケジュールイメージは以下です。

項目日付
①計算書類等の受領5月8日
②会計監査人の監査報告書5月25日
③招集通知の校了5月26日
④招集通知の納品6月2日
⑤招集通知の発送6月9日
⑥株主総会6月23日

①計算書類等の受領~②会計監査人の監査報告書

会計監査人である監査法人は、計算書類等を受領してから以下のいずれか遅い日までに取締役、監査役などに通知をしなければならないとされています【会社法計算規則130条第1項第1号】。
イ)計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日
ロ)計算書類の附属明細書を受領した日から1週間を経過した日
ハ)特定取締役、特定監査役及び会計監査人の間で合意により定めた日
しかし、実務上は計算書類等に関し、開示チェックをする中で修正が入ること多く、全部を受領したといえないことなども多いため、一般的にはハ)の合意日となり、監査報告書日となります。
この監査報告書日にむけて監査をすることとなるため、一番意識すべき重要な日となります。監査報告書日までの間には監査法人内の審査や監査役などへの監査結果概要報告会など実施することがとても多くなっています。

②会計監査人の監査報告書日~③招集通知校了(計算書類等承認)

招集通知校了は取締役会の承認日になります。
会計監査人の監査報告書日は監査報告書日時点の計算書類等が適正か否かの意見を表明したものになります。
そのため、監査報告書日後において、計算書類等を修正する場合は再度監査法人において審査等の手続が必要となります。そのため、取締役会の開催前に招集通知が回付されていることが多く、取締役会で修正事案が生じ、計算書類等が修正されることは基本ないです。

③招集通知校了~④招集通知の納品

証券代行が印刷・納品した招集通知を封入する期間です。
印刷会社が招集通知を印刷する時間を勘案してスケジューリングすることになりますが、スケジューリングは会社と印刷会社側で行われることが多く、監査法人は決められたスケジュールに基づき監査を実施することが多いです。

④招集通知の納品~⑤招集通知の発送

招集通知を封筒詰めする期間です。
証券代行が招集通知を発送するにあたり、証券代行において、印刷会社が印刷・納品した招集通知を封入する時間が必要となりますので、その時間を勘案してスケジューリングします。
この期間も、監査法人において計算書類に関し実施することは基本的にないです。

⑤招集通知の発送~⑥株主総会の期間

招集通知の発送は、
上場会社:株主総会の2週間前まで、非上場会社:1週間前までに行う必要があります【会社法299条】。
この期間では、監査法人において計算書類に関し実施することは基本的になく、上場会社の場合は有価証券報告書の開示書類の確認を実施します。

スペースマーケット在籍時のハヤトさんが執筆された記事を参考にしました。
監査法人以外の業務なども知りたい方はこちらをご参考ください。
https://note.com/hayato_une/n/n8b7e18a74c86

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