普通預金と当座預金の違い

はじめに

監査法人に入社して新人が担当することが多い「現金及び預金」。
開示上は「現金及び預金」と一括りされますが、中身は「現金」、「普通預金」、「当座預金」、「定期預金」などが含まれており、その中で、金額が一般的に多額なものが「普通預金」、「当座預金」になります。
預金という点で似たものですが、実務では異なる点が多くあります。
そのため、それぞれの特徴のメリット・デメリットを踏まえて利用するものが決定されるため、
『こちらの金額が多いのはこういった理由だろう』
『口座がないのはこういった理由だろう』
など知ると会社をより理解できます。
確認状との照合突合をすれば預金の残高確認はできますが、残高確認だけをしていても正直あまり面白くなかったです。
「現金及び預金」というすべての取引の源であるため、せっかく監査で色々な会社の監査を出来る機会がある以上、一歩踏み込んだ理解をするとさらに今後独立、起業、転職などした時にもすごく有用な知識になります。

普通預金と当座預金の違い

項目普通預金当座預金
①口座開設料無料1万円程度
②入出金方法ATMも使用できる窓口のみ
③小切手・手形支払できないできる
④引き出し・振り込み・振り替えの限度額あり(事前申請必要)なし
⑤自動貸付限定的あり
⑥利息つくつかない
⑦元金の保証1,000万円まで全額

①口座開設審査

口座開設時、当座預金は基本的に開設手数料がかかります。金融機関によって金額はさまざまですが、多くは1口座11,000円(税込)です。開設後は、小切手・手形の用紙や取引の証明書などをもらう場合にも手数料がかかります。
一方の普通預金口座は、開設時の手数料がかかりません
小切手・手形の発行手数料は、50枚入りで各11,000円(税込)のケースが一般的です。
金融機関によって手数料は異なるものの、小切手・手形の1枚1枚にはお金がかかっていることを理解

②入出金方法

普通預金は、金融機関の窓口やATMでお金の出し入れができます。一方、当座預金での入出金は、基本的に取引店の窓口のみです。当座預金に預けたお金を払い出す際は、小切手・手形の発行あるいは口座振替といった方法が用いられます。

窓口対応が基本のため、普通預金に比べるとやや不便ですが、一部の金融機関では、当座預金専用のキャッシュカードなどによるATMの利用が可能です。手続きの負担をなくしたい場合は、ATM対応の金融機関を利用することが考えられます。

③小切手・手形支払

当座預金口座があれば、取引先への支払いに小切手・手形が使えます。小切手・手形とは、現金で支払いをする代わりとして、相手に用紙を受け取ってもらう方法のこと。
小切手や手形を使うと、現金を持ち歩く必要がありません。防犯面で役立つだけでなく、現金を手渡しして数える手間も、数え間違える心配も不要です。

ただし、小切手と手形の違いにより注意が必要なことがあります。
小切手は受け取った時点で、手形は決められた支払期日より先のタイミングで現金化できます。
そのため、小切手は取引先に渡すとすぐにでも現金化の手続きができるため、当座預金の残高には注意しておく必要があります

④引き出し・振り込み・振り替えの限度額

当座預金は基本的に取引額の上限がなく、ビジネスで大きな支払いをする際もスムーズです。普通預金の場合は、大きな金額を引き出す際に窓口への事前申請が必要なケースがあります。当座預金なら多額の取引でも申請することなく、小切手・手形を使った円滑な支払いが可能です。

⑤自動貸付

当座預金では、当座借越(貸越)契約を結んでおくと自動で融資が受けられます。普通預金も自動で借入できるケースがありますが、定期預金を担保とするなど、対象が限定されるのが一般的です。

当座預金において、小切手や手形の金額に対して預金が不足していると、決済が続けられません。その際、厳しい審査を通過して当座借越(貸越)契約を結んでおくと、設定された上限額まで自動で借入できます

当座預金も普通預金も、自動貸し付けの仕組みが存在します。ただし普通預金の自動貸し付けは限定的であるなど、両者は性質が異なります。

⑥利息

一般的な普通預金と違って、当座預金は利息がつきません。普通預金の場合は、残高に対して利息がつきます。ただし日本銀行金融機構局によると、普通預金の年利は平均0.001%のため、高いとはいえません。

たとえば普通預金に1,000万円を預けたとすると、1年間にもらえる利息は単純計算で100円。100万円の場合は10円です。普通預金に大きな金額を預けているといったことがなければ、当座預金の無利息はデメリットというほどでもないです。

⑦元金の保証

これが最大の当座預金のメリットだと思います。

金融機関が破綻した場合、預金の全額が保証されます。国が定めた預金保険制度により、当座預金口座の持ち主は事前申込み不要で保証が受けられます。利息つきの普通預金は1,000万円と利息までしか保証されませんが、当座預金なら残高に関係なく保証範囲内です。

普通預金では1,000万円までしか保証されず、超過した分が払い戻しされなかった場合、取引先への支払いや設備投資、運営などに回すためのお金が減ってしまうことも考えられます。ビジネスでは大金を取り扱うケースが多いため、リスクに備えられるのは大きなメリットです。

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